インドのソーシャルメディア市場において、YouTubeやFacebook、Instagramはそれぞれ3億人を超えるユーザーベースを持つ主要プラットフォームとして君臨しています。
インドのSNSプラットフォーム利用状況(2024年1月時点)
プラットフォーム | ユーザー数 | 広告リーチ率 |
---|---|---|
YouTube | 4億6,200万人 | 61.5% |
3億6,690万人 | 48.8% | |
3億6,290万人 | 25.3% | |
Snapchat | 2億100万人 | 26.7% |
マーケティング戦略を立てる際に特に注目すべき点として、インドでは他国と比較して女性ユーザーの割合が低いという特徴があります。このデモグラフィック特性を考慮したチャネル選定が重要になってきます。
本記事では、18年以上のデジタルマーケティング経験を持つThe Digital Xが、日印両国のSNS事情を詳細に分析し、効果的なマーケティング戦略のヒントをご紹介します。
インドと日本のSNS利用状況比較
DATAREPORTALの最新データに基づき、両国のデジタル環境を比較してみましょう。
指標 | インド | 日本 |
---|---|---|
総人口 | 14億4,000万人 | 1億2,300万人 |
インターネット利用者数(普及率) | 7億5,150万人(52.4%) | 1億440万人(84.9%) |
SNS利用者数(普及率) | 4億5,150万人(32.2%) | 9,600万人(78.1%) |
インドのインターネットおよびSNS普及率は日本と比べると低めですが、人口規模が日本の10倍以上あることから、マーケティングターゲットとしての潜在市場規模は非常に大きいと言えます。
普及率が相対的に低い背景には、インドの人口分布が大きく関係しています。全人口の約6割が農村部に居住しており、都市部人口は4割程度にとどまっています。この人口分布がデジタルインフラの普及に影響を与えています。
また、SNSユーザーの男女比を見ると、女性が31.4%、男性が68.6%という特徴的な偏りがあります。このため、特に男性向け商材のマーケティングでは、より大きなリーチが期待できます。
インドの主要SNSプラットフォーム詳細分析
ここからは、インドで特に影響力の大きいSNSプラットフォームについて、詳しく見ていきましょう。以下は2024年1月時点における利用者数に基づくランキングとなります。
[続く…]広告リーチおよびユーザー数の両面で、YouTubeが圧倒的な強さを見せています。一方、日本のSNS利用状況と比較すると、以下のような特徴的な違いが浮かび上がります。
プラットフォーム | ユーザー数 | 広告リーチ率 |
---|---|---|
YouTube | 4億6,200万人 | 61.5% |
3億6,690万人 | 48.8% | |
3億6,290万人 | 25.3% | |
Snapchat | 2億100万人 | 26.7% |
広告リーチおよびユーザー数の両面で、YouTubeが圧倒的な強さを見せています。一方、日本のSNS利用状況と比較すると、以下のような特徴的な違いが浮かび上がります。
プラットフォーム | ユーザー数 | 広告リーチ率 |
---|---|---|
LINE | 9,600万人 | – |
YouTube | 7,860万人 | – |
X/旧Twitter | 7,340万人 | 59.7% |
5,545万人 | 45.1% | |
1,575万人 | – |
特筆すべき点として、インドではInstagramの広告リーチ率が日本と比べて低い傾向にあります。これは女性ユーザーの比率が低いことが一因として考えられます。
以下では、インドで高いシェアを誇るWhatsAppと、広告リーチ上位4プラットフォームの特徴を詳しく解説していきます。
WhatsApp:ビジネスコミュニケーションの主役
Meta社が提供するメッセンジャーアプリ「WhatsApp」は、インドで83.0%という圧倒的なシェア率を誇り、月間利用時間でもトップを走っています。日本ではLINEが圧倒的なシェアを持っているのに対し、インドではWhatsAppがビジネスコミュニケーションの中心的なツールとして定着しています。
統計調査会社statistaのレポートによると、従来は都市部のユーザーが中心でしたが、近年では農村部でも急速に普及が進んでいます。企業アカウントを通じた商品注文や顧客サポートなど、BtoBだけでなくBtoCビジネスでも幅広く活用されています。
YouTube:インドのデジタルメディアの王者
YouTubeは、インド総人口の32.2%にあたる4億6,200万人のユーザーを抱える、最大級のメディアプラットフォームです。広告リーチでは61.5%という驚異的な数字を記録し、その内訳は女性32.4%、男性67.6%となっています。特に18〜34歳の若年層での利用が顕著です。
インドのYouTubeでは音楽・映画関連コンテンツが特に人気を集めており、従来のテレビに代わる新世代のマスメディアとしての地位を確立しています。広告出稿による認知度向上を図るのに最適なプラットフォームといえるでしょう。
Facebook:コミュニティ重視の国民性と相性抜群
世界で23億人以上のアクティブユーザーを持つFacebookは、インドでもアメリカと並ぶ規模の市場を形成しています。インド総人口の25.6%にあたる3億6,690万人が利用しており、そのうち女性が25.5%、男性が74.5%を占めています。
日本では30代以上のユーザーが中心で、登録者数も2,600万人程度にとどまっていますが、インドではSNSの主戦場となっています。この背景には、家族や友人との近況共有を重視するFacebookの特徴が、インドの強いコミュニティ意識と見事にマッチしていることがあると考えられます。
[続く…]Instagram:世界一のユーザー数を誇るプラットフォーム
Meta社が運営するInstagramは、インド総人口の25.3%にあたる3億6,290万人が利用しており、インターネットユーザー全体の48.3%をカバーしています。ユーザー構成は女性32.8%、男性67.2%となっています。
特筆すべきは、2023年1月から1年間で1億3,300万人もの新規ユーザーを獲得し、急成長を遂げている点です。日本では6,600万人のユーザーベースを持ち、20〜30代女性が中心的なユーザー層となっていますが、インドではより幅広い層に支持されています。
statistaのデータによると、インドは世界最大のInstagramユーザー数を誇り、アメリカを上回る規模に成長しています。さらに、インドのインフルエンサーマーケティングにおいて最も重要視されているプラットフォームとしても知られています。このため、BtoC向けの商材を展開する企業にとって、効果的なマーケティングチャネルとして注目を集めています。
Snapchat:若年層を中心に急成長中
投稿したコンテンツが一定時間で消える「ストーリー機能」で注目を集めたSnapchatは、インドで総人口の14.0%にあたる2億100万人のユーザーベースを持っています。インターネットユーザー全体の26.7%が利用しており、女性35.9%、男性61.9%という比較的バランスの取れた性別構成が特徴です。
Snapchatの特徴的な時限公開機能を活用することで、限定感のある特別なキャンペーンを展開できることから、物販系ビジネスとの相性が特に良いプラットフォームとして評価されています。
インドのSNSマーケティング成功事例
statistaの調査によると、インドのインフルエンサーマーケティング市場は2022年時点で120億インドルピー(約220億円)を超える規模に成長しており、現在も拡大を続けています。TikTokが使用禁止となっているインドでは、特にYouTubeとInstagramがインフルエンサーマーケティングの主戦場となっています。
以下では、インドで成功を収めたSNSマーケティングの代表的な事例をご紹介します。
YouTubeでブレイクした日本人インフルエンサー
Mayo氏は、インドで最も影響力のある日本人インフルエンサーとして知られています。人口規模の大きいインドでは、数多くのインフルエンサーや著名人が存在する中で、外国人が注目を集めることは非常に困難とされています。しかし、Mayo氏はYouTubeとInstagramを合わせて300万人以上のフォロワーを獲得する快挙を成し遂げました。
成功の鍵となったのは、当初の日本向けコンテンツから、インド市場に特化した戦略への転換でした。特に、公用語の英語ではなくヒンディー語を使用し、現地の文化や習慣に深く入り込んだコンテンツ制作を行うことで、他の外国人インフルエンサーとの差別化に成功しています。
[続く…]Instagramで活躍する現地のメガインフルエンサー
Awez Darber氏は、3,176万人という圧倒的なフォロワー数を誇るインドの振付師です。特に音楽やダンスに関心の高い若年層から絶大な支持を得ています。
また、旅行ブロガーとして活躍するSavi and Vid氏は、126.6万人のフォロワーを持つカップルインフルエンサーです。世界各地の魅力的な旅の様子を発信しており、インバウンドマーケティングにおける重要なインフルエンサーとして注目されています。
インドでSNSマーケティングを成功させるためのポイント
インドでSNSマーケティングを展開する際は、以下のような特徴や注意点を押さえておく必要があります。
Google系サービスとの連携を重視
インドではGoogle系のサービスが日常生活に深く浸透しており、ユーザーの生活に欠かせないものとなっています。そのため、Googleのエコシステムと親和性の高いサービスを選択することで、より効果的なマーケティング展開が期待できます。
男性ユーザー中心のマーケティング設計
インドのSNSユーザーの大半が男性であることを考慮したマーケティング戦略が重要です。日本では「インスタ映え」に代表される女性向けのアプローチが主流ですが、インドでは男性視点でのコンテンツ制作やプロモーション展開が効果を発揮するケースが多く見られます。
SNSと購買行動の密接な関係性
statistaの予測によると、インドのソーシャルコマース市場は2022年の70億米ドルから2030年には840億米ドルまで成長すると見込まれています。インドの消費者は従来型のECサイトよりもSNSでの商品購入を好む傾向があり、さらにSNSを通じて商品の推奨を行うことも一般的です。
このような購買行動の特徴を理解し、SNSとECの連携を強化することで、効果的な売上拡大が期待できます。SNSを通じた商品訴求と購入促進の一貫した施策が重要となります。
多様性への配慮が不可欠
インドは多民族・多宗教・多言語国家という特徴を持ちます。公用語としてヒンディー語と英語が使用される一方で、約20の言語が日常的に使用されており、地域や宗教によって消費者の価値観や嗜好が大きく異なります。
そのため、マーケティング施策においては、現地の宗教や文化に対する深い理解と配慮が必要不可欠です。多様な背景を持つ消費者に対して、適切な表現とアプローチを選択することが求められます。
中国製アプリ規制とローカルアプリの台頭
2020年6月以降、インドではプライバシーとセキュリティの観点から、TikTokをはじめとする中国製アプリ(WeChatなど)の使用が禁止されています。これらのプラットフォームを通じたインド市場へのアプローチは不可能となっているため、注意が必要です。
その代替として注目を集めているのが、インド発のショートフォーム動画アプリ「Moj」です。15の現地言語に対応しており、TikTok規制直後の6ヶ月で1億ダウンロードを達成する急成長を遂げました。
若年層へのアプローチ手段としてMojの活用を検討する価値があり、また同アプリの成功はインドにおけるローカライズ戦略の好例として参考になるでしょう。
このように、インドのSNSマーケティングでは、現地特有の市場環境や消費者特性を十分に理解し、それに適応した戦略立案が成功の鍵となります。